東芝とNECは,次世代不揮発性メモリであるMRAMの大容量化技術を開発した。成果は大きく2つある。1つは,メモリ・セルの書き込みに必要な電流値を従来の1/2以下に低減しつつ,誤書き込みの抑制が可能なTMR素子を開発したこと。もう1つは,読み出し時間を従来の1/4に短縮できる新型のクロスポイント構造のセルを開発したこと。2004年12月13日から米国サンフランシスコで開催されている半導体製造技術関連の国際学会「2004 IEEE International Electron Devices Meeting(2004 IEDM)」で発表した。
MRAMの実用化に際しては,微細化に伴って増加する書き込み電流の削減と,読み出しの高速性を維持しながらセル面積を縮小することが課題とされていた。
書き込み電流の低減に向けて両社は今回,従来は長方形だったTMR素子の形状を,長方形の長辺に半円形の膨らみを持たせるように変更した。これにより,書き込み電流を従来の1/2以下にしても,安定な動作を可能にした。メモリ・セルごとに多少の特性バラつきがあっても,誤書き込みを抑制できるようになったという。この技術は,チップの消費電力の低減にも有効という。
読み出し時間の短縮とセル面積の縮小を両立するために,TMR素子選択用のトランジスタを4個のTMR素子で共有する新規のクロスポイント構造セルを開発した。この結果,メモリ・セル面積を従来のクロスポイント型セルと同等の6F2(Fは最小加工寸法)に抑えつつ,読み出し時間を従来のクロスポイント型セルの1μsから250nsに短縮した。
MRAMでは,読み出し速度を高める目的で,1個のTMR素子と1個の選択トランジスタを組み合わせる「1トランジスタ+1TMR素子」構造と,選択トランジスタを省いたクロスポイント構造の2種類のセルが提案されていた。前者の「1トランジスタ+1TMR素子」構造では,セル面積が30F2と大きいという欠点があった。一方,後者のクロスポイント構造では,選択トランジスタがない分,回り込み電流の影響によって,本来読み出したいTMR素子の情報を正確に読み出すことが難しかった。このため,読み出し時間が1μsと長かった。
東芝とNECは,250nm世代のTMR素子の作成技術と,180nm~130nm世代のCMOS回路の作成技術を組み合わせて,2005年度に256MビットMRAMの実現に必要な基盤技術を確立する予定である。 |