KDDIと東京電力が、固定通信事業での提携を10月に前倒しする方向で交渉を進めていることが、5日わかった。両社は来年3月をめどに固定通信分野での全面提携を実施し、業界トップのNTTに対抗することを目指していたが、まずKDDIが10月から、東京電力が持つ加入者系の光ファイバーを新たに借りる方針。全面提携の前に既存サービスでの協力を始めることで、提携の実を上げる考えだ。
KDDIのFTTH(家庭用光ファイバー回線)サービス「光プラス」は、電話局から加入者宅までの加入者回線を、ほぼすべてNTTから借りている。自社所有でないため、コストや営業面で自由度が小さく、光プラスの契約数は6月末で11万2000件にとどまっている。東電から有利な条件で借りれば、NTTへの依存度が下がり、契約数の拡大にもつながる。
東電は電力供給システムを支える通信網として、首都圏を中心に光ファイバーを保有している。この既存インフラを活用したFTTH事業「テプコひかり」を02年3月から開始。05年度は440億円をかけて光ファイバー網を敷設し、サービス提供エリアではNTTと互角に戦える体制を整備しつつある。
KDDIと東電の提携交渉では、来年3月をめどに、東電の子会社で法人向け固定通信を手がけるパワードコムをKDDIが吸収合併することが固まっている。さらに、個人向けの「テプコひかり」についても、東電本体から分離して「光プラス」と協力したサービスを提供することを軸に、検討を進めている。現在、KDDIがパワードコムについて資産査定しており、早ければ9月下旬にも基本合意する予定だ。【位川一郎、須佐美玲子】