セイコーエプソンが2004年度中間期(2004年4月~2004年9月)の連結決算を発表した。売上高は対前年度比3.9%増の6834億円。営業利益は同98.9%増の658億円と,約2倍に伸ばした。売上高も営業利益も,中間期としては同社の過去最高を更新した。
営業利益の倍増に最も貢献したのが,液晶パネルや半導体などを扱う電子デバイス部門である。コスト削減を進めた結果,営業利益は同293.8%増の371億円と3倍近い伸びを見せた。売上高は2207億円で,同4.9%増である。
アモルファスSi TFT液晶パネルを前倒しで携帯電話機向けに転換
ただし,2004年度下期(2004年10月~2005年3月)について言えば,電子デバイス部門は当初の思惑ほど高い業績は見込めないようだ。同社は,2004年度通期での同部門の業績予想を下方修正した。営業利益は2004年7月時点の予想である570億円より90億円下げ,480億円と見込んだ。つまり,2004年下期について200億円と見込んでいた利益が,110億円にまで落ち込む計算になる。売上高は5000億円で,同年7月時点での予想より430億円減としている。
業績予想を下方修正した理由は2つある。1つは,パソコン用ディスプレイや家庭用の小型テレビ受像機向けのアモルファスSi TFT液晶パネルがじりじりと値を下げていること。もう1つは,デジタル・スチル・カメラの売れ行きが伸び悩んでいる影響で,同製品向けに供給していた低温多結晶Si TFT液晶パネルの需要が予想より落ちていることだ。「2004年7月時点では,これらの液晶パネルがここまで軟調になるとは思わなかった。ちょっと高望みし過ぎましたね」(同社 代表取締役 副社長の木村登志男氏)。
この2つの液晶パネル事業は,いずれも三洋電機との液晶パネル事業統合でセイコーエプソンが手に入れたもの。同社と三洋電機は,2004年10月に業界4位(同社推定)となる新会社「三洋エプソンイメージングデバイス」を立ち上げた。当初計画では,小型テレビなどに向けていたアモルファスSi TFT液晶パネルを,利益率の高い携帯電話機向けの小型液晶パネルへと徐々に転換していく計画だった。
この事態を受けてセイコーエプソンは,2つの手を打つ。1つは,アモルファスSi TFTの携帯電話機向けへの転換を加速させること。従来の計画では,2005年3月までに売上高比で15%を携帯電話機向けとする予定だった。この目標を30%と2倍に増やす。これにより,たとえパソコン用ディスプレイや家庭用テレビ受像機向けの事業で苦戦したとしても,アモルファスSi TFT事業全体では赤字にならないところまで持っていけるとする。「小型液晶パネルの付加価値は非常に高い。例えば,680mm×880mmガラス基板から15インチ型液晶パネルは6枚しか取れないのに対し,携帯電話機向けの液晶パネルは250枚取れる。我々の液晶ドライバICなどでモジュール化した品を販売できることを考えれば,ガラス1枚当たりの利益は10倍くらいになる」(同社の木村氏)。
もう1つは,低温多結晶Si TFT液晶パネルの高精細化を進め,付加価値を高めること。2インチで250ppiほどとした製品を2005年3月までには投入できるとしている。 |