船井電機は,米国の地上デジタル放送に向けてスマート・アンテナ付きのセットトップ・ボックス(STB)を開発した。2004年11月中旬に米国の量販店などを通じて発売する。
今回開発したSTBには,専用のスマート・アンテナが添付されている。同アンテナを据え付けてSTBにつなぎ,初期設定を始めると,STBはスマート・アンテナに対してテレビ放送用信号をスキャンするための制御コマンドを送る。
このスマート・アンテナは,指向性を電気的に16方向に振ることができる。どの方向から,どのチャンネルの信号が到来するのか自動的にスキャンして,テレビ放送のチャンネルとアンテナの受信方向の対応をとっていく。なお,このスマート・アンテナは今回開発したSTB専用で,船井電機の関連会社であるDXアンテナが開発した。
現状では1割だが…
米国では,ケーブルテレビ経由でテレビ番組を視聴するのが主流となっており「地上アナログ放送の受信比率は1割程度」(船井電機)とごく少数派である。船井電機は,地上波のテレビ放送が普及していない理由はアンテナの据え付け作業にあると分析した。同社によると,米国ではテレビ放送のチャンネルによって電波塔が異なること事が多い。地域によっては,受信したいチャンネル数だけアンテナを用意し,別々の方向に向けて設置しなければならないこともあるという。これは,アナログ放送でもデジタル放送でも変わらない。
そこで「自動的にチャンネルと電波の到来方向を対応付けられる機能があれば,今後爆発的に普及する」(船井電機)とみて,スマート・アンテナ付きSTBの開発に着手した。船井電機によると「モータなどで物理的に方向を動かすタイプのアンテナが付いたSTBはこれまでにもあった。しかし,電気的に指向性の方向を制御するスマート・アンテナ付きのSTBは本製品が初めて」(船井電機)という。
一方,日本では,米国とは状況が異なる。例えば関東地区では,東京タワーに全テレビ放送の送信アンテナがあり,関東の広域をカバーしている。このため,チャンネルごとに別々の方向から到来する電波を受信するという場面はほとんどない。 |