「Kaspersky Labsは技術で勝負する会社だ。実際,70社にのぼるベンダーが,Kaspersky Labsのウイルス検出エンジンを採用している。広告や宣伝にお金をかけるつもりはない。一般ユーザーに対する知名度は低くても構わない。技術者や専門家に(Kaspersky Labs製品のよさを)知ってもらえれば十分だ」――。ロシアのアンチウイルス・ベンダーKaspersky Labsの創設者であり,同社のアンチウイルス研究所所長(Head of Anti-Virus Research)のEugene Kaspersky氏は11月25日,IT Proの取材に対して,同社の戦略などを語った(写真)。
Kaspersky Labsはロシアでは一番のシェアを誇るアンチウイルス・ベンダーである。Kaspersky Labs自体は1997年に設立されたが,Eugene Kaspersky氏は1989年からアンチウイルス・ソフトの作成やウイルスの収集を行っていたという。「最初は趣味だったが,本業になってしまった」(Kaspersky氏)
Kaspersky Labsのウイルス対策ソフト(エンジン)である「AntiViral Toolkit Pro(AVP)」(2000年からは「Kaspersky Anti-Virus(KAV)」に名称変更)は,さまざまなベンダーの製品に組み込まれている。例えば,フィンランドF-Secureのウイルス対策製品の,ウイルス検出エンジンの一つとしてAVPが使われている。
多くのベンダーに同社のエンジンが採用されている理由として,「検出率に優れる。加えて,新種ウイルスにすぐに対応する」(Kaspersky氏)ことを挙げる。「『いかに検出率を上げるか』――製品開発の際には,この一点に最も力を入れている。インタフェースの使いやすさなどは二の次だ」(同氏)
また,「Kaspersky Labsではウイルスを自動的に解析するシステムを持っている。解析の70%程度は自動化しているので,新種にすぐに対応できる。新種のサンプルをユーザーから送られた場合には,遅くても1時間から2時間以内に対応できる」(Kaspersky氏)
Kaspersky Labsは2004年3月に日本法人も設立した。「日本国内では,まずはOEMに力を入れる」(日本法人Kaspersky Labs JapanのCEOであるVitaly Bezrodnykh氏)。既に国内の何社かは同社のエンジンを採用している。
「もちろん『Kaspersky Labs』のブランドは大事だし,日本でも有名になってほしい。ただし,他社のように大々的に広告を出してプロモーションをするようなことはしない。そういった広告で名前を知られても,一般ユーザーはすぐに忘れてしまう。それよりも,技術者や専門家に名前を覚えてもらいたいと考えている。実際,Kaspersky製品の性能を知ってもらえば,技術者や専門家ならそのよさを分かってくれるだろう」 |