無線を使ったホンダの自動車用最新型キーで、誤作動のため利用者が外から車に入れなくなるなどのトラブルが続発したため、同社が9月からこのキーの採用を取りやめたことが分かった。人の手をまったく使わず施錠できる業界最先端のシステムだったが、それが逆にあだとなってしまった。
トラブルを起こしたのは、厚さ数ミリのカード型「スマートカードキー」。利用者のポケットなどに入っていれば、キーから出る電波を自動車が受信して自動的に認証を行う仕組み。乗車時はドアのハンドルを握るだけで解錠され、降車時はドアを閉めて車から離れれば勝手に施錠される。他メーカーのリモコンキーの場合は、施錠にはドアのボタンを押すなどの人手による作業が必要だが、ホンダの技術ではそれが不要で、より自動化が進んだ最先端のシステムとされていた。
02年からオデッセイやアコードなど新車の一部に標準装備され、希望者向けには3万~7万円のオプションとして販売された。現在約18万3000人が利用している。ところが昨年後半以降、携帯電話などの電波の影響で、キーを車内に置いたままでも、降車してドアを閉めると施錠されてしまうケースが続発。いったん施錠されると中から解錠することはできず、専門の業者を呼んで開けるまで、人が車内に閉じ込められる騒ぎまで起きた。従来型のキーも装備され、このキーを使えば開けられるが、カードキーの利用者は、従来型キーを携帯していないことが多く、出先で困りはててしまうという。
このため、同社は9月に一部改良して発売した最上級車「レジェンド」から、利用者がドアのハンドルに触れなければ施錠できない仕組みに変更。自動車の安全性には問題ないため、リコール(回収・無償修理)には該当しないが、同社は今春から、利用者全員にダイレクトメールでトラブルが起きていることを通知した。ただ技術的な改修は難しいため、メーカーとしては注意を呼びかけるラベルをキーに張ることしかできず、対応に苦慮している。【山本明彦】