２勝２敗のタイで迎えたパ・リーグのプレーオフ第２ステージ第５戦は、逆転勝ちしたロッテが３１年ぶりのリーグ優勝を飾った。２点を追う六回に福浦の適時二塁打で１点差に追い上げ、さらに１点を追う八回に代打・初芝、福浦の連打で一、二塁とし、１死後、里崎の２点二塁打で試合を引っ繰り返した。セラフィニが７回途中２失点でしのいだ後、小刻み継投で反撃を封じた。ソフトバンクは松中の適時打などで序盤でリードを奪ったが、追加点がなかった。２年連続の公式戦１位で臨んだソフトバンクは救援エース馬原が痛打を浴び、昨年に続いて第２ステージ最終戦で敗北した。

　▽渡辺俊　生みの苦しみ、みたいな感じでした。（日本シリーズは）時間もないので、今日も（阪神相手に）投げるつもりで準備してました。

　▽清水直　絶対に逆転できると思っていた。こちらも総合力で踏ん張りました。（短期決戦で）流れを変えるのが苦しかった。

　▽サブロー　うれしい。打てなかったけど、守備では貢献できたと思う。独特のプレッシャーを感じていた。（里崎の場面では）決めてくれると思っていた。

　▽福浦　プレッシャー、バリバリでした。胃が痛いですよ。（六回の適時打の場面は）バットを短く握ってスイングした。チームはのびのびと力を出し切った。

　▽黒木　うれしいですよ、最高に。報われました。日本シリーズでは投げたい。

　▽金田正一　重光オーナーが３１年間も泣き言も言わずにこつこつと戦力を集めたのが花開いた。

　▽有藤通世　３１年前と今年と共通しているのは挑戦者精神。勝ちたいという思いにあふれている点だ。大切なのは１回の優勝ではなく、常勝軍団にしていくことだ。

　▽村田兆治　今年はすべてにバランスが取れていた。シーズン最後まで１位になることをあきらめずに戦ってきたのが、プレーオフの進撃につながった。

　▽弘田澄男　日本シリーズも厳しい戦いになると思うが、貴重な体験。楽しんで、皆で日本一を勝ち取ってください。

　▽ロッテ・重光武雄オーナー　優勝はバレンタイン監督のさい配と、それに応えてくれたコーチ、選手、そして背番号２６のファンの声援があったからこそ。

　▽ソフトバンク・王監督　５試合とも１点差で、いい戦いだったと思う。ただ、うちの打線がシーズンに比べて得点力が落ちていた。向こうの投手がよかったこともあるけど、中押し出来ないのが大きかった。

　▽パ・リーグ・小池唯夫会長　ロッテは３１年ぶりの優勝、本当におめでとう。この勢いで日本一になってほしい。レギュラーシーズン１位のソフトバンクも奇跡的な２連勝で、ドラマがあったと思う。ソフトバンク選手諸君にも敬意を表したい。

　◇選手への信頼を貫いたバレンタイン監督

　「この素晴らしい選手たちを信頼している」。バレンタイン監督の口癖だ。最後の最後まで信頼を貫いた監督が、選手たちの手で何度も宙に待った。

　意地としか思えないさい配だった。四回の無死一、二塁。ここ２試合当たりが止まっているサブローに強攻を命じて遊ゴロ併殺打。さらに八回。今季限りで引退する初芝が全力疾走で得た好機を福浦がつないだ無死一、二塁で、またもサブローには強攻策。自分が選んだ４番。バントをさせずに信じてヒットを待った。

　サブローは期待に応えられずに邪飛に終わったが、だれかの失敗を、だれかがカバーするのが今年のロッテ。決めたのは里崎だった。試合前から「オレに風が吹いとるんやで、間違いなく」活躍を予言していた通り、フェンス直撃の逆転二塁打を放った。

　「３連勝で勝てばロッテは勢いだけ、と言われる。ここで勝ってこそ強さを証明できる」。里崎が話した通り、ロッテは強さを証明し、チームカラーを強烈に印象づけて、阪神との日本シリーズに臨む。【冨重圭以子】

　◇ソフトバンク、２年連続で日本シリーズ出場権を失う

　レギュラーシーズン１位のソフトバンクが２年連続で日本シリーズ出場権を失った。１年前に浮上したプレーオフ制度改革案が通っていれば、第４戦をソフトバンクが制した時点で優勝決定していたのだから、すっきりしない幕切れだ。

　昨年の第２ステージでソフトバンク（当時はダイエー）が西武に敗れた後、小池パ・リーグ会長は「アドバンテージを見直したい」と語った。１位チームが５ゲーム差以上つけたときのみに１勝が与えられるが、レギュラーシーズンの重みを考慮して無条件に１勝を与える案を考えていた。

　ところが理事会でソフトバンク以外の球団が「２年間はこの制度でやることになっていた」と主張し、今年も同じ方式に。４．５ゲーム差のソフトバンクにアドバンテージはなかった。

　勝率による出場制限も設けなかったため、シーズン勝率５割を切った西武が日本シリーズに出場する可能性さえ出た。

　日程の有利不利も色濃く出た。今季パ・リーグ６球団はそろってレギュラーシーズンを９月２８日に終了。おかげでソフトバンクは第１戦が２週間ぶりの試合。試合勘を取り戻す前に連敗したのが最後まで響いた。王監督も制度批判は避けたものの「大リーグのように同じ試合数で勝ち上がっていく方がいい」と、１位チームの日程上の不利を認めた。

　１１月のパ・リーグ理事会でプレーオフのやり方を見直す予定だ。だが、１年前にも問題点が露呈していたのに改革を先延ばしした結果を、リーグ会長と理事は重く受け止めるべきだ。【冨重圭以子】

　◇すっきりしない幕切れ

　九回２死。ロッテの抑え小林雅が川崎を左飛に打ち取ると、選手たちは一斉にマウンドへと走った。３１年ぶりにパ・リーグの覇権を手にした瞬間だ。

　感動で目をうるませながら、抱き合ったり飛び上がったり…。

　このステージ、いきなり２連勝で、一気に王手をかけた。そして３戦目。九回、４点リードでマウンドには守護神の小林雅。彼には十分過ぎるほどのリードだった。だが、この起用は暗転した。打者１０人に５安打を浴び、まさかの同点。サヨナラ負けのきっかけを作り、チームはそこから連敗した。

　この日はわずか１点のリード。しかし、バレンタイン監督は小林雅の起用をためらわなかった。

　「ダンスパーティーに行くとき、女性のパートナーを連れて行くように、当然のように選んだ。不安はなかった」

　先頭打者に四球を出したが、「一度経験したので慣れていた。（借りを）取り返すのはここしかない」。犠打で１死二塁となっても落ち着きを失わず、直球とシュートを中心に続く２人を打ち取った。

　あきらめない野球は今年のロッテの真骨頂。この日も中盤までリードされながら八回に初芝、福浦の連打で畳み掛け、里崎の左越え二塁打であっさり逆転に成功した。

　バレンタイン監督も、優勝の原動力を「自分たちの力を信じて、夢に向かって最後の最後まで懸命に戦ったこと」と明かす。

　いよいよ今週末から日本シリーズが始まる。次なる夢は日本一。決してあきらめず、おごらず。これまで通りの野球で日本一を目指す。【深町郁子】

　◇３１年前は３連勝…カネやん、仙台で胴上げ

　金田正一監督が率いた７４年のロッテは、リーグ最多１６勝の金田留広、１３勝の木樽正明、１２勝の村田兆治、９勝の成田文男と規定投球回数到達者が４人。同年新人王の三井雅晴に、前年に完全試合達成の八木沢荘六と多彩な投手陣でリーグ２位のチーム防御率を誇った。

　本塁打数リーグ４位の打線は、後に２０００安打を達成する有藤通世、山崎裕之を軸に、１６３センチの小兵ながら打率リーグ６位だった弘田澄男やしぶといさに定評があったラフィーバーらが脇を固め、チーム打率１位、総得点２位の成績を残した。

　当時は前・後期制。前期は阪急に次いで２位。後期は主砲のアルトマンが病気で欠場する中、４番にもバントをさせるつなぎの攻撃で１位に。投手陣が抜群の安定感を見せ、阪急とのプレーオフを制した。潤沢な投手陣を擁す一方、打線はつなぎに徹する点は、今季のチームカラーと似ていた。

　巨人の１０連覇を阻止し、エース星野仙一を擁する中日との日本シリーズは、６試合中４試合に登板した村田などの活躍もあり、４勝２敗で２４年ぶりの日本一に輝いた。当時、ロッテは宮城県営球場を本拠地としていたが、日本シリーズは宮城球場が小さすぎるなどの事情から東京・後楽園球場で行われた。

　この年は巨人の長嶋茂雄が現役引退。一方、３月にはフィリピンから元陸軍少尉の小野田寛郎さんが帰国。海外では８月にニクソン米大統領がウオーターゲート事件を受けて辞任した。【飯山太郎】

　○…ロッテのリーグ優勝に道を開いたのは、今季限りでの引退を表明している初芝だった。１点を追う八回、先頭打者で代打出場。三遊間に平凡なゴロを転がしたが、ソフトバンク三塁・バティスタと遊撃・川崎が交錯して内野安打に化けた。「打った瞬間は『やっちゃった』と思ったけど、なかなか球が（一塁に）来なかった」と初芝。この幸運な安打を起点にしてチャンスを広げ、逆転劇につなげた。

　初芝は「最初で最後のチャンスをものに出来たのがうれしい。最後は勝って、終わりたいもんね」と満面の笑みを浮かべた。