「開催国はニュージーランド」。国際ラグビー機構(IRB)のシド・ミラー会長が発表した瞬間、最前列の日本ラグビー協会会長、森前首相ら日本招致団はいっせいに顔をしかめて天を仰いだ。大歓声を挙げるニュージーランド招致団と明暗を分けた。 「だからラグビーはだめなんだ」「(常任安保理事国が固定している)国連と一緒だ」。決定後、日本招致団のメンバーからはこうしたぼやき声が漏れたという。 決定後、森前首相は「同じメンバーで(開催地を)たらい回しにしていいのか、と私たちは訴えてきた。それが最終的には通じなかった」と無念さを隠さなかった。 ミラー会長はラグビーの国際化を訴え、経済的に大きな位置を占めるアジア、北米に広めることが重要だと唱えてきた。しかし、理事会の決定は「伝統の遵守」だった。決定後ミラー会長からは「日本は追い込んだね。もう少し早くキャンペーンを始めていれば」と慰められたという。 真下昇・日本ラグビー協会副会長は「(世界最強の)オールブラックスの存在が大きい」と指摘する。ニュージーランドは、代表チームのオールブラックスとのテストマッチ開催を条件に、投票を求めて回った。1回のテストマッチで、入場料など約3億円が対戦国に転がり込むという。「それだけ各ユニオンも財政的に苦しいということ。将来の発展より目先の利益を取った」。 それでも1回目の投票で南アフリカを破ったことは収穫だ。「少なくとも一定数はグローバル化に賛同してくれた」と森前首相。だが、15年大会の開催に日本が立候補するかどうかはまだ白紙という。【山科武司】 |
ラグビーW杯:理事会決定は「伝統の遵守」
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