三重県尾鷲市沖でタンカー2隻が衝突し7人が死傷した事故で、業務上過失致死傷と業務上過失往来危険の罪に問われたケミカルタンカー「日光丸」(499トン)の操船係で1等航海士、上野久雄被告(53)=鹿児島県いちき串木野市=の判決公判が28日、津地裁であった。山本哲一裁判長は「旭洋丸側にも過失はあったが、針路確認などの注意義務を怠り、7人の死傷者を出した結果は甚大」などとして、上野被告に禁固2年6月、執行猶予4年(求刑・禁固2年6月)を言い渡した。
判決などによると、上野被告は今年7月15日午前3時55分ごろ、尾鷲市沖の熊野灘を約10.8ノット(時速約20キロ)で航行中、レーダーで左前方約5.5キロの位置に、タンカー「旭洋丸」(697トン)を確認。濃霧で視界が悪いにもかかわらず、その後、レーダーで旭洋丸の動きを監視する義務を怠り、同船の右舷に日光丸の船首を衝突させた。旭洋丸の乗組員6人が死亡、1人がけがを負った。
事故では旭洋丸側にも同様の過失があったとして、操船していたとみられる1等航海士(当時57歳)=事故で死亡=が被疑者死亡として業務上過失致死傷などの容疑で津地検に書類送検(不起訴処分)された。
また、この事故では、横浜地方海難審判理事所が上野被告と日光丸の吉本美利船長(61)を受審人として、刑事事件の起訴にあたる審判開始を横浜地方海難審判庁に申し立てている。29日に第1回審判が開かれる。【山口知】