損害保険大手の損保ジャパンが生命保険を販売する際、契約者が支払うべき保険料を社員が違法に立て替えていた問題などをめぐり、金融庁は今週中にも同社に対し、生保の新たな販売を1カ月停止するなど、一部業務の停止命令を出す方針を固めた。保険業法は保険会社による保険料の立て替えを「特別利益の提供」として禁じており、金融庁は、多くの営業拠点で違法行為があったことを重視。管理態勢不備で経営責任の明確化も求める方針で、トップの進退に発展する可能性もある。
同社の社内調査によると、提携先の第一生命の生命保険にからみ、全国約530の販売拠点のうち約130カ所で、違法な保険料の立て替えが行われていた。関与した営業担当社員は280人で、02年2月~05年8月に計366件の違法販売があり、うち194件は、契約者が積極的に加入する意思がないのに名義を借りていたという。
金融庁は05年9~12月の立ち入り検査で、違法な立て替え販売を把握した。損保ジャパンは組織的な関与を否定しているが、代理店を監督する立場の多くの社員が評価を上げるため自ら立て替えをしていたとみられ、金融庁は重い処分が必要と判断した模様だ。
また、同社の山口県の支社でも、社員が契約書に勝手に印鑑を押すなど3年間で52件の不適切な契約手続きがあり、金融庁はこれに対しても、一部業務停止などの処分を検討している模様だ。
保険料の違法立て替えをめぐり同社は1月、担当役員3人が報酬の一部を返上し、監督責任者を含む約520人を厳重注意などの処分にした。
同社と第一生命は01年から、相互に相手の保険商品を提携販売している。第一生命の商品のうち、損保ジャパンは死亡保険を中心に販売し、第一生命全体の新規契約高の2%超を占める。問題の期間の販売実績は約3万6000件だった。
保険業界では厳しい営業ノルマを背景に、保険料立て替えや架空契約などによる契約の水増しがかねて指摘されてきた。損保ジャパンへの業務停止命令で、各社は改めて管理態勢の早急な見直しを迫られそうだ。
生損保を巡っては、明治安田生命が保険金の不当な不払い行為の発覚で05年に2度の業務停止処分を受け、他の生保31社でも435件(約20億円)の同様の不適切な不払いが発覚。損保26社でも18万件(約84億円)の不払いがあり、金融庁は昨秋、損保各社に業務改善命令を出している。