◇笑いと涙の人間喜劇が好き!
人間を見かけで判断してはいけない。でも、ちりちりパーマにほお紅をつけたこのおじさん、キャバクラ好きで赤いハートのプリント模様入りパンツ1丁の姿で、露骨に股間(こかん)をまさぐるとなると、単なるスケベー中年にしか見えない! と思った人は「弁護士のくず」(TBS系、木曜午後10時)の九頭(くず)弁護士の術にはまっている。人間ってそんなに単純な生き物じゃないよ、オモテだけ見ていたらその人間の半分もわからないよ、という逆襲が待っている。
「このドラマ、反語で訴えていて、うまくできていますね。コメディーはやったけど、ここまでデフォルメしたのは初めて。笑いの中に涙がある人間喜劇はすごく好きです」
伊藤英明演じる正義感あふれる新人弁護士が、相談相手の言い分を信じて、外形的事実だけで物事を判断するのに対して、九頭は言葉のウラに潜む欲望、情念、打算といった心の中の良からぬものを見通して人間をつかむ洞察力の持ち主。豊川・伊藤のテンポのいい掛け合い漫才が「このドラマの生命線。伊藤君と作りながらやっています」。
単眼ではとらえにくいのは豊川悦司という役者も同じ。今や真剣なラブストーリーができる役者の数少ない一人。女心をわしづかみする強い目と声を発射する一方、ご覧のように、いたずらが露見したときの少年のような含羞(がんしゅう)の色気が、女性ファンの母性を刺激する。「なんでオレにこんな役が、というギャップのある方がやりがいがありますね」とニヤリ。【網谷隆司郎】
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■人物略歴