兵庫県明石市の大蔵海岸で01年12月、東京都の会社員、金月一彦さん(39)の長女美帆ちゃん(4)が生き埋めになり5カ月後に死亡した砂浜陥没事故で、業務上過失致死罪に問われた国土交通省と明石市の当時の担当職員計4人の判決が7日、神戸地裁である。神戸地検は「事故を回避できたのに放置した」と全員に禁固1年を求刑。4被告は「陥没は予見できなかった」と無罪を主張している。公共スペースの安全管理責任を、行政機関の個人がどこまで負うのか、判決が国や自治体に及ぼす影響は大きい。
公判では、▽安全確保のための職務権限や注意義務(安全管理義務)は国交省と市のどちらにあったか▽死亡事故につながるほどの陥没を予見できたか▽立ち入り禁止など回避措置を取り得たか--の3点を主な争点に、検察側と被告側が真っ向から対立した。
■二重の管理
大蔵海岸は、浸食から守る保全施設として国が、公園として明石市が管理。安全対策の責任の所在に関し、双方が「自分たちには権限も義務もない」と主張。検察は「責任のなすりつけ合い」と厳しく批判し、「4被告の責任は同列」とした。
■予見できたか
砂浜では、事故の約3年前から陥没が確認され、市は3度も補修工事をした。現場から約60メートル離れた同じ堤防沿いでも陥没が確認されていた。
検察は、砂浜全体か、少なくとも堤防沿いの一定の範囲を立ち入り禁止にすべきだったとした。
市の2被告は、事故前に陥没が集中した一帯を立ち入り禁止にしたことを挙げ、「陥没が起きていない場所まで立ち入り制限できない」と反論。
■責任を負うのは
国交省と明石市は05年に民事上の過失を認め、賠償金約8800万円を支払うことで遺族との示談が成立した。女児の父、金月さんは意見陳述で「4被告を許したわけではない。民事で争わなくても、刑事で責任が追及されると信じている」と述べている。
【酒井雅浩、近藤大介】
毎日新聞 2006年7月6日 10時49分