福田康夫元官房長官の自民党総裁選への不出馬表明を受けて谷垣禎一財務相が22日、靖国神社に参拝しない考えを表明するなど、福田氏を支持した「反小泉・非安倍」勢力の取り込みを意識した動きが早くも表面化した。福田氏に代わる受け皿候補としては額賀福志郎防衛庁長官、与謝野馨金融・経済財政担当相、山崎拓前副総裁らが取りざたされている。総裁選での安倍晋三官房長官の優位は動かないとみられるもの、今後は投票での2位争いの要素もはらみつつ、宙に浮いた「福田票」をにらんだ動きが活発化しそうだ。
福田氏不出馬の情勢が強まった20日夜、額賀氏は都内で所属派閥の津島派の船田元事務総長と協議。「衆院側で若手を中心に動きが高まるなら、事務総長に一定の協力をお願いしたい」と出馬に意欲を示し、協力を要請した。
党内最大派閥の森派が安倍氏で一本化される運びとなり、第2派閥の津島派の対応に注目が集まるが、額賀氏の出馬意欲は「総裁選で安倍氏に次ぐ第2位につけ、幹事長ポストを獲得する思惑」(同派幹部)との見方もある。一方、同派出身の久間章生総務会長は22日、新潟市内で「最終的に額賀氏がどう判断するかだ」と記者団に語り、額賀氏出馬に改めて慎重姿勢を示した。額賀氏が出馬した場合、若手の一部が安倍氏支持に回り分裂状態となることへの警戒感があるとみられる。同派のキーマン、青木幹雄参院議員会長は「まず衆院側が額賀氏擁立でまとまるかどうかだ。出るなら、それなりの票が取れなければいけない」と周辺に語り、安倍氏に次ぐ2位確保の見通しが前提との考えを示している。
一方、福田氏に代わりやはり「反小泉・非安倍」の受け皿として期待する向きがある無派閥の与謝野氏は「光栄だが、自分から動くことはない」と周辺に語り、当面は静観の構えだ。与謝野氏は21日夜、青木氏と総裁選への対応を協議した。
すでに出馬の意向を表明しながら低支持率に苦しんでいる麻生太郎外相、谷垣両氏にとっても、「福田票」の行方は気になるところ。ただ、もともと福田氏を推す動きは広がりを欠いたきらいもある。実際に選挙に与える影響については限定的との見方もあるだけに、駆け引きが活発化するとみられる。【堀井恵里子】
毎日新聞 2006年7月22日 19時28分