戦後の帝銀事件などを手がけた伝説の警視庁名刑事・平塚八兵衛は、「そばを食っていた」というだけで、部下を捜査本部から外したという。
捜査員で験(げん)をかつぐ人たちは、「長シャリ」は食べない。長シャリとは、うどんや、そばなどのめん類のことだ。「食べると、捜査が長引くから」だという。
しかし、捜査幹部は、こう解説する。「実際は、栄養をつけるために、めんじゃなく、ご飯を食べろという意味が強い」。体力勝負のため、「そば食っていると、胃が弱いのかと心配する」とか。
本当だろうか。知り合いの栄養士に聞いてみた。
「カツ丼は約850キロカロリー。うどんは具によって違うけど300~450キロカロリーと、エネルギーは約2倍です」。おお、本当らしい。「しかも、カツ丼のご飯は糖質、豚肉はたんぱく質、ビタミンB群など、比較的に栄養のバランスが取れています。めん類は具材が2~3品で栄養に偏りがあります。腹持ちもよくないので、おなかがすいて捜査に身が入らないのでは」。恐るべし、先人の知恵。【大坪信剛】
毎日新聞 2006年8月7日