【タシケント山下修毅】小泉純一郎首相は30日、日本の首相として初めての中央アジア訪問を終えた。カザフスタンと原子力協定の交渉開始に合意するなど、エネルギー資源に恵まれた中央アジア諸国に資源外交を広げる足がかりを得たのは成果といえる。ただ同諸国と政治的・軍事的に緊密な関係にある中国、ロシアと比べ出遅れ感は否めず、本格的な関係強化は次期政権に委ねられた。
「ロシアと中国に挟まれながら欧米とも良好な関係を築き、バランスの取れた外交をしている」
小泉首相は28日、カザフスタンのナザルバエフ大統領との会談で同国の外交姿勢をこう評価した。世界第2位のウラン埋蔵量をもつ同国とは原子力協力の覚書も交わし、石油パイプラインの敷設などで先行された中国への巻き返しを図った。
9月に退陣を控えた首相がモンゴルに続き中央アジアを訪問先に選んだのは、資源外交を拡大するとともに、中露周辺国との関係強化で両国をけん制するため。人権問題で欧米との関係が冷え込んだウズベキスタンのカリモフ大統領との会談では民主化を促し、「日本との関係が米欧との関係にいい影響をもたらすよう期待している」と橋渡し役も買って出た。
しかし、北朝鮮と友好関係にあるウズベキスタンとの報道向け声明の調整作業はギリギリまでもつれた。結局、北朝鮮のミサイル発射を非難する文言を盛り込めなかったことは、旧ソ連を構成していた中央アジア諸国との外交が一筋縄ではいかないことも印象づけた。
毎日新聞 2006年8月31日