計画的に細胞を死なせる遺伝子(カスパーゼ)を活性化させたり、その程度を調節する仕組みを、東京大のチームがショウジョウバエの実験で明らかにした。カスパーゼの活性化の程度によって、分化、増殖など細胞の幅広い生理機能が制御されていることも分かった。ほ乳類にも同様の仕組みがあり、ハンチントン病など神経変性疾患の解明につながると期待される。米科学誌「セル」電子版で4日発表した。
遺伝的にあらかじめ計画された細胞死は、オタマジャクシがカエルになるときに尾がなくなるなど、生物の形態変化などで重要な役割を果たす。
倉永英里奈講師、三浦正幸教授らはまず、カスパーゼの働きを促進する役割の酵素を突き止めた。ハエの複眼に成長する部分で、この酵素を段階的に増やすと、カスパーゼの活性が高まって死滅する細胞が増えた。外感覚器の剛毛になる細胞集団で酵素を減らすと、カスパーゼの活性が弱まり、剛毛の数が増えた。これらの結果から、カスパーゼの活性化の度合いが、細胞の運命を左右している、と結論付けた。
三浦教授は「神経変性疾患の原因となる神経細胞の変形などにカスパーゼがかかわっているという報告もある。今回の成果はそうした疾患の解明にも役立つのではないか」と話している。【須田桃子】
毎日新聞 2006年8月4日