知人の農業ジャーナリスト、榊田みどりさんからユニークな本が送られてきた。書名は「にっぽん たねとりハンドブック」(現代書館)。自然農法にこだわる農業関係者の共著で、64種類の野菜や豆類について自家採種(種採り)の方法が写真入りでわかりやすく紹介されている。
作物の種を採って再生産するのは昔は普通だったが、今は大半の農家が種苗会社などの種を買っている。特に、トマトやナスなどの果菜類は品種改良で1代限りしか育たなくなった「1代雑種」が多い。収穫量が多く、見た目が美しいなど経済性に優れるが、味や栄養は在来種に劣るという。しかも、日本は野菜や豆類の種を年間数千トンも輸入しており、国産は1割程度。遺伝子組み換え作物も入ってきている。
世界では、植物種子などの遺伝子資源を大企業が特許化し独占する動きも盛んだ。インドの女性科学者、バンダナ・シバさんはそれを「バイオパイラシー」(生物学的海賊行為)と批判している。海賊の餌食にならないよう、地道な種採りを応援したい。【行友弥】
毎日新聞 2006年8月8日