直径がナノメートル(ナノは10億分の1)サイズの炭素粒子でできた物質「ナノカーボン」の一種について、東京大や科学技術振興機構、NECなどの共同研究チームが、金属などの不純物を含まない「標準物質」を作り「細胞への毒性は低い」との実験結果を出した。ドイツ化学会誌に論文が掲載される。
ナノカーボンなどの「ナノ粒子」は、粒子が小さいために通常の物質とは性質が違うとみられ、安全性が国際的な議論になっている。しかし従来のナノカーボンは、製造工程で金属が混じっていたり、粒子の大きさが不ぞろいだったりで、実験で安全性を調べても結果の解釈が難しかった。
研究チームは、金属を使わず作れるナノカーボンの一種「カーボンナノホーン」に着目。直径が約100ナノメートルにそろったナノホーンを作り、人間やマウスの細胞に加えた。培養液1リットルに1グラム混ぜると、細胞の増殖速度がやや落ちた。この毒性は、道路舗装などに使われる石英微粒子の10分の1程度にあたるという。
チームの中村栄一・東京大教授(化学専攻)は「ナノカーボンは細胞毒性が高いとの報告も過去にあったが、混じっていた金属の影響かもしれない。比較の土台になる標準物質ができたので、安全性の研究はさらに進むだろう」と話している。【須田桃子】
毎日新聞 2006年9月8日