生活保護基準を下回る額の年金を、物価にスライドさせて減額したのは憲法違反として、北海道旭川市の年金生活者、杉尾正明さん(70)が社会保険庁長官と国に対し、減額処分の取り消しなどを求めた行政訴訟の判決が20日、札幌地裁であった。奥田正昭裁判長は「国民年金法などの各規定が憲法に違反しているとは認められない」として請求を棄却した。
訴えによると、国は特例法により、03年度と04年度の老齢年金を減額。杉尾さんの年金は、03年度には前年度比7900円減の年86万7200円、04年度には同2600円減の年86万4600円となった。
杉尾さんは「全国的な生活保護基準の平均額は65歳単身世帯で年約120万円、同2人世帯で年約190万円程度とされる。国はこれを熟知しながら、消費者物価指数の変動を理由に年金減額を強行した」として、生存権を定めた憲法25条違反と主張していた。
杉尾さんは弁護士を付けず、独学で年金や健康保険の現状を問う行政訴訟を数多く起こしている。国民健康保険料の徴収を巡り、旭川市の条例の違憲性を争った訴訟では、1審で違憲判決を勝ち取ったが、最高裁で敗訴した。【真野森作】
毎日新聞 2006年9月20日