埼玉県熊谷市で89年、養鶏場の従業員宅に放火して夫婦を殺傷したとして、殺人や現住建造物等放火などの罪に問われた元従業員、福島大三被告(82)に対し、東京高裁は26日、死刑とした1審・さいたま地裁判決(03年7月)を破棄し、無期懲役を言い渡した。判決で池田修裁判長は「首謀者は共犯者で、被告は利用された面がある。共犯者の無期懲役と歴然とした差異があり、年齢も考慮すると極刑にちゅうちょを覚えざるを得ない」と述べた。
被告側は「やけどを負った夫の証言には信用性がない」などとして無罪を主張していたが、判決は「証言の信用性は高い」と退けた。
判決によると、福島被告は、保険金目当てに殺人を計画した養鶏場経営者、長井俊一受刑者(67)=無期懲役が確定=から依頼され、報酬目的で共謀。89年4月5日夜、同僚の高原晟(あきら)さん方にガソリンなどをまいて放火し、高原さんの妻ヒロ子さん(当時48歳)を殺害し、高原さんに約4カ月のやけどを負わせた。長井受刑者は夫婦や住宅にかけた保険金2773万円余を受領し、福島被告は300万円を受け取った。福島被告は以前にも殺人罪などで懲役20年の判決を受け、当時は仮出獄中だった。【佐藤敬一】
毎日新聞 2006年9月26日