政府・自民党は21日、継続審議となっている社会保険庁改革法案について、臨時国会の会期末に審議未了・廃案とする調整に入った。同法案は、社保庁の年金業務を国の特別機関「ねんきん事業機構」に引き継ぐことが柱。しかし国民年金保険料の不正免除問題を受け、同党は「社保庁職員が国家公務員のまま新組織に移る案では、来年の参院選で勝てない」と判断した。年金運営組織の職員を非公務員化する法案に練り直す意向だ。
今年の通常国会に提出された同法案は、08年10月に社保庁をねんきん事業機構と、医療保険を運営する全国健康保険協会に分割する内容。同協会職員は非公務員だが、同機構職員は「公的年金への信頼回復のため、国の新たな行政組織として再出発することが重要」として、国家公務員の身分を維持させる。
ところが今年3月に不正免除問題が発覚した。法案を継続審議とした与党は今の臨時国会で現法案を修正する考えだったが、世論の反発を警戒し断念。再び継続扱いとすれば参院選に影響するとみて、廃案とすることにした。近く自民党の中川秀直幹事長と丹羽雄哉総務会長が会談し、こうした方針を打ち出す見通し。
社保庁改革をめぐっては、安倍晋三首相が9月の自民党総裁選で「解体的見直し」を主張。首相就任後も「すべて公務員でやらないといけないのかを含め、もう一度見直す必要がある」と再三強調している。
自民党は、年金運営組織を非公務員型に改める新法案を、来年の通常国会以降に提出することを念頭に置いている。だが、公的年金を非公務員に委ねることに対する議論は不十分で、自民党が志向する法案が実現するかどうかは不透明だ。
【吉田啓志】
毎日新聞 2006年10月22日