新潟県長岡市は中越地震の被災地として初めて、来月から被災者用公営住宅でのペット飼育を条件付きで認めることを決めた。しかし今春、入居のために愛犬を手放した人もおり、「対応が遅すぎる」との声も上がる。95年の阪神大震災ではペットの癒やし効果から、公営被災者住宅168戸で飼育が許可されている。
県によると、全県の被災者向け公営住宅は集合住宅41棟336戸。一般公営住宅で被災者に飼育を認めた例はあるが、被災者専用住宅でペットは一切認められていなかった。仮設住宅では犬猫持ち込みが許可されており、「被災者住宅でも認めて」と要望が県や自治体に多数寄せられていた。
長岡市は同市長倉町の長倉団地(1棟40戸)の1、2階計10戸を「ペット可」にして試行。飼える動物の種類を決めるなど飼育ルールを作り、ほかの住民から苦情が出るなどしなければ、徐々に他の団地にも広げる。
これに対し、同市の会社員、野村のり子さん(43)は「失ったペットは戻らない」と憤る。
野村さんは今年4月、家族5人で仮設住宅から市内の被災者用公営住宅に移る際、4歳のオスの犬「冬馬」を県動物保護管理センターに渡した。市に相談した時、「預けるか、処分するしかない」と言われたためだ。安楽死処分されたと思っている。野村さんは「被災の苦難を一緒に味わってきた家族同然の犬。もっと早く対応してくれたら」と悔しがる。【中村牧生、五十嵐和大】
毎日新聞 2006年10月23日