安倍晋三首相と中国の胡錦涛主席が今月8日の会談で、日中両国の関係改善のキーワードとして合意した「戦略的互恵関係」との文言は、中国側が最近多用している「ウィンウィン」(共に勝者になる)との表現をもとに日本側が考案していたことが関係者の話からわかった。
「戦略的互恵関係」は2国間問題にとどまらず北朝鮮対応やエネルギー問題など国際的課題も含めて関係改善を図る意味をこめた言葉。発想したのは日本側。中国が日中関係改善に向け用いていた「ウィンウィン」に注目したが、日本語でこれに該当する適当な単語が見当たらない。中国語では「共贏」(ゴンイン)という言葉があるため日本語で「ウィンウィン」、中国語では「共贏」と使い分ける案が浮上したが、中国の武大偉外務次官が「互恵ならその意味が出る」と知恵を出し、日本側も了承して「互恵」に落ち着いた。
「戦略的」は、従来は主に同盟国間で使われてきた表現だが、外務省は中国が米国やロシアなどとの外交関係でやはりこの言葉を多用していることに着目した。チャイナスクール(中国語研修組)の中堅外交官が「戦略的という言葉をぜひ使いましょう。中国側も喜ぶはず」と提案、会談を前に根回しした。98年の日中共同宣言では、両国関係は「友好協力パートナーシップ」とされている。【佐藤千矢子】
毎日新聞 2006年10月26日