北京五輪出場を目指す日本代表監督の星野仙一氏(60=阪神SD)が米球団へ出資し、経営に参画することが22日、明らかになった。メジャー傘下の1A球団に知人ら5人で共同出資。早ければ来月にも正式契約を結ぶ。球界の次代を担う若者に本場・米国でベースボール・マネジメントを学ばせたいという星野氏の以前からの構想が実現する。また、国内の少年野球チームを米国に派遣するプランも描いていることが分かった。
華やかなメジャーを頂点に巨大なピラミッドを形成する米球界。その底辺である1A球団に資本参加し日本の若い人材を派遣、育成する。星野氏が長年温めてきたこの“夢プラン”が実現する。
今回の資本参加は星野氏の趣旨に賛同した知人ら計5人で出資。星野氏は「そういう方向で動いていることは事実」と認めたものの、具体的な球団名に関しては「まだ正式に契約していない」とした。関係者の話から西地区のドジャース、ロッキーズ、エンゼルスのいずれかとみられ、星野氏の出資額は1億円前後、計5億円は総資本の半分にあたるとみられる。
星野氏は以前から日本球界の“システム的な遅れ”を指摘。次代の球界を担う人材の育成が急務と訴えてきた。今回の資本参加も選手の育成にとどまらず、球団経営からマネジメントに至るまで、総合的なノウハウを日本の若者に学ばせたい意向があるからだ。さらには2632試合連続出場の元オリオールズ、カル・リプケン・ジュニア氏(46)の影響もある。リプケン氏は01年現役引退後、故郷のメリーランド州アバディーンに球場を建設。オ軍傘下のマイナー球団を誘致。現在は共同オーナーに名を連ねメジャー底辺層の育成に貢献している。
ドジャースのピーター・オマリー前会長をはじめ、米球界に太い人脈を持つなど自他ともに認めるメジャー通。メジャーやゴルフのマスターズなど米国取材の際は米コミッショナー事務局(MLB)幹部とも会談。一昨年はセリグ・コミッショナー、デュパイ最高執行責任者(COO)らMLB要人と精力的な意見交換も重ねてきた。星野氏には今回の出資と同時に日本の少年野球チームを米国に派遣、ホームステイで本場の野球を体験させるプランも抱いている。“フィールド・オブ・ドリームス”の実現、将来的な野球の発展、普及を目指してのもので、その熱い思いは24日発売の男性ファッション誌「GOETHE(ゲーテ)」(幻冬舎)のインタビューでも打ち明けている。
「(出資による)金銭的な見返りなどまったく期待していない。オレをここまで育ててくれた野球界への恩返しになればということ。それがタイガースへのお返しになるのか、球界全体へのことになるのか、それは今後のこと」。星野氏は日本代表監督として任務に忙殺されながら、日本球界発展に向けた準備も同時進行させる。
≪長嶋さんと直接会談へ≫18日にキャンプ視察を打ち上げた星野監督はこの日、深夜のニュース番組に生出演。長嶋茂雄・巨人終身名誉監督と電話で話した際に「今度ゆっくりお会いしましょう」として近日中に直接会談することが決まったことなどを明かした。今後は28日にソフトバンク-ロッテ戦(ヤフーD)を視察、3月上旬のスタッフ会議ではアジア予選(11月26日~12月2日、台湾)の代表候補選手を大枠でリストアップするなど大忙しの日々が続く。同監督は「各球団から好きなのを持っていくと40人ぐらいになる。これでペナントレースを戦わせてくれたら…と思うよ」とうれしい悲鳴。3月9日には田淵ヘッド兼打撃コーチらと渡台して、球場や選手宿舎を事前視察する。
スポーツニッポン 2007年2月23日