世界陸上選手権(8月、大阪)の男子代表選考会を兼ねた東京マラソン2007が18日、東京都新宿区の東京都庁をスタート地点に、臨海副都心の東京ビッグサイトまでの片道コースで3万870人が参加して行われた。男子は、04年の東京国際マラソンの覇者でケニア出身のダニエル・ジェンガ(ヤクルト)が25キロ付近でスパートをかけ、そのまま後続を引き離して2時間9分45秒で優勝した。昨年の別府大分毎日マラソン2位の佐藤智之(旭化成)が2時間11分22秒で2位。昨年12月のドーハ・アジア大会4位の入船敏(カネボウ)が2時間12分44秒で3位に入った。
マラソン初挑戦の徳本一善(日清食品)は5位。04年アテネ五輪5位の油谷繁(中国電力)は途中棄権した。
女子は初マラソンの18歳、新谷(にいや)仁美(豊田自動織機)が2時間31分1秒で優勝。ゲストランナーとして参加した92年バルセロナ五輪、96年アトランタ五輪メダリストの有森裕子(リクルートAC)は5位だった。車いす男子では、副島正純(シーズアスリート)が1時間32分21秒で優勝した。【山本亮子】
◇25キロ過ぎ、ジェンガ飛び出す
冷たい風の中を大粒の雨がたたき付ける悪天候の中でスタート。ジェンガ、デリマ、佐藤、入船、徳本、林、油谷ら10人余りが先頭集団を形成し、中間点の通過タイムが1時間4分50秒前後のスローペースで進んだ。
レースが大きく動いたのは25キロ過ぎ。ジェンガが飛び出し、急激にペースアップ。入船、佐藤、徳本、林らが食らい付く一方、油谷は対応できずに後退し、集団が瞬時に崩れた。
ジェンガは独走態勢に入り、2位集団は31キロ付近から入船、佐藤、徳本の3人に。34キロ過ぎに徳本が遅れ始め、36キロ付近で入船も佐藤に離された。起伏が続く終盤の難所で粘った林が徳本を抜き去り、4位に入った。【安藤由紀】
▽入船敏 寒くて感覚がなかったが、自分で行かないとますますだめになると思った。しかし佐藤君に行かれて気持ちが切れてしまい、そこから手足がしびれた。
▽油谷繁 (32キロ付近で途中棄権)はってでも走りきろうと思っていたが、寒くて凍えそうだった。寒さの影響からか股(こ)関節が痛んでいた。世界選手権は逃したが、北京五輪を目指し、あきらめずにトライしたい。
▽市橋有理 悔いは全くありません。思い残すことなく、次に進める。若い時にいろんなことを経験できてよかった。(引退レースは、3時間2分48秒で女子20位)
○…実業団1年目の新谷が初マラソンとしては好記録で女子1位に。練習の一環での出場で、指導を受ける小出義雄氏から示された目標は2時間40~50分。だが「無我夢中でペースがわからなくて」と指示を上回るペースで入り、押し切った。岡山・興譲館高時代に全国高校駅伝3年連続1区区間賞など活躍したホープは「42キロを知ることができ、いい経験になった」と笑顔。小出氏は北京五輪の代表選考会にも挑ませる意向。「スピードがつけば世界記録も狙える」と期待を寄せる。
○…初マラソンで4位の徳本は「いやあ、マラソンは奥が深いです」。果敢に日本人トップを争ったが、終盤に大きく失速。「2時間12分は切れると思ったが、前と1回離れたら脚にガンと来た」と苦笑した。トラックの第一人者は、一昨年はひざの故障で手術も経験。地道なリハビリや練習で乗り越えた後、マラソン挑戦を決意した。苦しみつつもその第一歩を刻み、「(チームの先輩でアテネ五輪6位の)諏訪さんにくっついてラストの粘りを学びたい」。北京五輪への挑戦に意欲を高めた。
○…車いす男子を制した副島は、2位に5分24秒の大差をつけた。風雨と寒さの悪条件の下、肉体的にも精神的にも厳しいレースだったが、ライバルがレース中に弱音を吐くのを聞き、「オレなら行ける」と逆にペースを上げた。浅草・雷門前の28キロ付近ではすでに独走状態に。コースが平たんなためハイペースでのレースを予想。ホイールを速く回せるよう手の滑り止めの松ヤニを少なめにするなど工夫した。05年、06年のホノルルマラソンの男子車いすで優勝している実力者は、トラック種目にも「興味がある」。今後は、中距離種目で北京パラリンピック出場を狙う。
毎日新聞 2007年2月18日 11時47分 (最終更新時間 2月18日 16時49分)