化学メーカー大手のカネカは7日、自然界で分解される植物由来のプラスチックの生産能力を、現在の5倍に増やすと発表した。米スターバックスがプラ製ストローの廃止に踏み切るなど、プラごみの問題に関心が集まっており、需要が急拡大すると見込む。
植物油脂などを原料とする同社の「PHBH」は、海水や土の中の微生物によって分解される「生分解性プラスチック」の一つ。30度の海水なら、6カ月以内に90%以上が水と二酸化炭素に分解される。昨年、国際的な認証機関に日本で初めて認められた。
今は欧州を中心に、生ゴミから堆肥(たいひ)を作る際の袋など向けに輸出しているが、需要が増え続けており、増産を決めた。高砂工業所(兵庫県高砂市)に約25億円を投じ、生産能力を来年12月に年間約5千トンに増強する。将来的にはストローなど食器類にも使われると見込み、生産規模を年間2万トンに増やす方針だ。
追い風となっているのは、プラごみが劣化してできた5ミリ以下の粒「マイクロプラスチック」が海洋汚染の原因として注目されていること。欧州連合(EU)の行政機能を担う欧州委員会は5月、プラ製ストローなどの流通を禁じる規制案を示した。米スターバックスも2020年までに、世界の全店でストローの提供をやめ、直接口をつけて飲めるふたを使ったり、紙製や生分解性プラ素材のストローに変えたりしていく方針だ。
生分解性プラは価格の高さや耐久性の低さがネックとなり、普及はまだごく一部にとどまる。ただ、こうした流れで切り替えが進んでいけば需要が一気に広がる可能性がある。(中村光、伊藤弘毅)