鉄道をテーマにした博物館のさきがけ、九州鉄道記念館(北九州市門司区)がこの夏、15周年を迎えた。展示を支える副館長は、30年越しの夢を実現させてJRに入ったという異色の鉄道マンだ。
「展示車両は私の人生そのもの。だから、毎朝磨くのです」。副館長の宇都宮照信さん(68)は、そう話す。
鉄道ファンとして追いかけた蒸気機関車の「C59」。食堂車でコックを務めた寝台列車を引っ張っていた電気機関車の「ED72」。「14系客車」では、そのB寝台の隅の下段ベッドでよく仮眠をとった。
展示車両は9両。このうち機関車3両は自ら磨く。布でこすり、油を塗る。合計で3時間。記念館は関門海峡にのぞんでおり、潮風が吹き付ける。すこしでも手を抜けば、鋼鉄製の車両はすぐに傷む。
福岡市の国鉄筑肥線近くで育った。蒸気機関車を小学生のころから毎日のように見に行った。高校生になると、父に買ってもらったカメラを手に撮影旅行に出かけた。勉強がおろそかになり、国鉄の採用試験に落ちた。
19歳のとき、鹿児島線を走る寝台特急「はやぶさ」の食堂車をファインダー越しに見て、ひらめいた。「コックになれば、毎日乗れる」。食堂車を営む「日本食堂」に入り、夢は半分かなった。撮影も趣味で続け、九州を代表する鉄道写真家、鉄道マニアとして知られるようになった。
次の転機は、53歳。JR九州…