日本列島を縦断した台風24号は、東海地方でも猛威を振るった。「豊橋うなぎ」の産地で知られる愛知県豊橋市でも、養鰻(ようまん)業者や卸業者に被害が生じた。4日午前、愛知県内では三河地方の山間部で停電が続いている。
同市青竹町でウナギの養殖や卸しを手がける夏目商店は9月30日午後10時半ごろに停電した。日ごろは井戸からモーターで水をくみ上げ、出荷間近のウナギに24時間水をかけているが、停電でモーターが動かなくなった。
真っ暗な作業場で、夏目義秀社長(30)らは懐中電灯をたよりに水をいれたポリ袋に穴を開け、おけに入ったウナギに水をかけた。しかし、十分な水圧にならず、弱ってしまったウナギが1、2割に達し、やむなく開いて加工に回した。
モーターが再稼働できたのは、日付が変わった10月1日午前2時過ぎ。知り合いのコメ農家が発電機を貸してくれたので窮地をしのぐことができた。夏目さんは「思ったより停電が長引き、生きたまま出荷する予定のウナギを加工せざるを得なかった。最悪の事態を想定し、発電機の導入を検討する」と話す。
豊橋市農業支援課によると、豊橋うなぎの生産量は約390トン(2017年度)。強風で養殖池のビニールハウスが倒壊したり、破損したりする被害も出ているという。(細見るい)