世界的ジャズピアニストの山下洋輔さん(76)が10日から兵庫県宝塚市で始まった第43期囲碁名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)の第4局を現地で観戦。「いやあ、ゾクゾクします」と興奮している。
井山名人と張九段の熱戦をリアルタイム詳報
山下さんは知る人ぞ知る囲碁好き。中学時代に碁敵を探していた親友に教わり、ハマった。その後ジャズにのめり込み、音楽界に入ったあとは囲碁から遠ざかっていたが、1986年、ニューヨークのカーネギー・ホールでの演奏旅行の際、共演者と勢いで現地の囲碁クラブに飛び込み、再び目覚めたという。
棋力は「まちの碁会所で初段とは言えないレベル」と謙遜するが、名人戦の対局室に臨場し、井山裕太名人と張栩挑戦者の対決を見て「ジャズの即興演奏と似ている」と感じたという。
「ジャズは共演者の演奏に反応して最高の表現をしなければならない。囲碁もどんな手を打ってくるかわからない相手の手に応じて、その場で最善手を求めなければならない」
対局2日目の11日朝、両対局者が前日までの進行を並べるのを間近に見て「2人の音楽家が演奏を始めたように感じた」という。
囲碁界では超人の域に達したAI(人工知能)が人間の常識にない手を次々に放ち、革命を起こしている。山下さんによると、ジャズ界でもAIが曲をつくるが、「聴衆は演奏者の姿、動き、表情をひっくるめて楽しんでいる。AIにそれはできません。囲碁も同じでしょう。人間が打つからこその魅力があります」。(大出公二)