今年のノーベル平和賞に選ばれたナディア・ムラド・バセ・タハさん。米ワシントンで8日、記者会見に臨んだ=ランハム裕子撮影
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過激派組織「イスラム国」(IS)の性暴力を告発し、今年のノーベル平和賞に選ばれたイラクの少数派ヤジディ教徒、ナディア・ムラド・バセ・タハさん(25)には、同じ被害に遭った多くの同胞がいる。ISが拉致したヤジディ教徒の男女は6千人超。性奴隷とされ、尊厳を砕かれた女性たちは、癒えぬ傷を抱えたまま、重い日々を送っている。
イラク北部の地方都市シェイハンの住宅地に、目立たぬその民家はあった。ISの性奴隷とされ、古里に戻れないヤジディ教徒の女性たちのために、地元のNGO「ニナワ・ヤジディ社会チャリティー」が運営するシェルターだ。
主婦ゼレさん(27)は2016年から、長女(10)、次女(7)、長男(3)の4人で身を寄せる。「1人でいると怖くてたまらない。あの苦しみは絶対に忘れない。彼らを殺してやりたい」。今月上旬、朝日新聞の取材に、ISによる人身売買で、戦闘員6人の「妻」にさせられた経験をとつとつと証言した。
14年8月、自宅があったイラク北部シンジャルに近い村がISに襲われた。妊娠5カ月の身重で親族ら74人とともに捕まった。長男を出産後、約300キロ離れたシリア北部ラッカ近郊まで連行され、15年夏、軟禁先の民家に来た初対面のシリア人戦闘員から、こう告げられた。「お前を買った」。「同年代で背が高く、青い目をした男」の性奴隷になった瞬間だった。
長女、次女と住まされた2階建…