米国の女性歌手テイラー・スウィフトが7日、1億1千万人以上のフォロワーを持つ自身のインスタグラムで、来月の中間選挙での投票を呼びかけ、民主党候補の支持を表明した。「Shake It Off」などの大ヒット曲で知られる歌姫の突然の政治的発言に、保守派や共和党に動揺が広がっている。行動の背景に何があるのか、音楽評論家の東郷かおる子さんと、米国在住の映画評論家・町山智浩さんに寄稿してもらった。
インスタグラムへの投稿文(抜粋)
11月6日の次期中間選挙について書きます。私はテネシー州で投票するつもりです。これまでは自分の政治的意見を表明するのは気が進みませんでしたが、ここ2年間で私の人生にもこの世界にも色々なことが起き、気持ちが大きく変わりました。(略)私はLGBTQの権利のための闘いを信じ、性的指向やジェンダーに基づく差別は、いかなるものも間違っていると信じます。(略)肌の色やジェンダーや誰を愛するかとは関係なく、すべてのアメリカ人の尊厳のために闘う意志のない人には投票できません。テネシー州の上院議員候補はマーシャ・ブラックバーンという女性です。(略)できるだけ女性に投票してきましたが、ブラックバーンは支持できません。議会での彼女の投票記録にはゾッとします。男女の賃金平等に反対。女性への暴力禁止法の改正に反対。ビジネス上で、ゲイカップルへのサービスを拒否する権利はあると彼女は考え、ゲイカップルに結婚する権利はないと考えています。これは私の地元、テネシー州の価値観ではありません。私は上院はフィル・ブレデセン、下院はジム・クーパーに投票します。(略)まずは登録しましょう。テネシー州の登録最終日は10月9日です。(略)
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テイラー・スウィフト
28歳。シンガー・ソングライター、女優。2006年、カントリー音楽のレーベルからデビュー。グラミー賞を10度受賞し、同賞の年間最優秀アルバム賞を2度受賞した初の女性ソロ歌手。作品の総売上枚数は4千万枚以上、楽曲ダウンロード数は1億3千万を超える。11月に3年ぶりの来日公演を予定。元ラジオDJによるセクハラを巡る裁判で昨年勝訴した。
音楽評論家・東郷かおる子さん
テイラー・スウィフトが自身のインスタグラムで、与党の共和党でなく民主党支持を表明したのは今月初めのことだ。それが注目を集めた原因は、彼女が保守的な白人層に人気があるカントリー音楽界の出身であることと無縁ではない。
2003年にカントリー音楽界の女性トリオ、ディクシー・チックスが、イラク戦争へと踏み出したブッシュ政権を批判して保守層の怒りを買い、CD不買運動にまで発展してしまった経緯がある。今回のスウィフトの意思表示が一部で批判はあるものの、当時ほどの騒動にならないのは、今の彼女の立ち位置がポップ音楽寄りであることと、昨年誕生したトランプ政権への不信感が後押ししているという見方がある。現に彼女がコメントを投稿した後、多くの若者層が中間選挙の投票に必要な有権者登録に走ったという。
米エンターテインメント界で、…