東京都青梅市の商店街に掲げられ、「昭和のまち」を演出してきた映画看板の撤去が19日、始まった。地元の映画看板師が今年亡くなり、長年の掲示で歩道への落下などの懸念も出てきたためだ。映画が娯楽の最高峰だった時代を思い起こさせる手書きの看板が、24年にわたる役割を終える。
1994年から映画看板が飾られてきたのは、JR青梅駅近くの旧青梅街道沿いの住江町商店街。題材は「男はつらいよ」「ティファニーで朝食を」「ニュー・シネマ・パラダイス」など昭和の名作で、封切り当時のポスターを元に描かれた。中高年を中心に人を呼び込み、地域の振興にも貢献してきた。
描いたのは、「最後の映画看板師」と呼ばれ、「板観(ばんかん)さん」と親しまれた久保昇さん。今年2月に77歳で病死した。かつての中心街だった一帯には三つの映画館があり、中学卒業からの16年間で3千~4千枚の看板を手がけた。映画館が閉じた後は商業看板の制作に移ったが、商店街から「再興のため」と頼まれて、再び映画看板に取り組んだ。
それから24年――。板観さんが他界し、色あせた看板の修復や、数年ごとの新作への取り換えができなくなった。今秋の台風の暴風で看板の一部が破れ、同様の看板が壁から落ちたため、商店街は歩行者の安全のために早急な撤去を決めた。今後は「猫」をテーマに活性化をめざすという。
この日、小津安二郎監督の「晩…