時紀行
石川県・能登半島を走る第三セクター「のと鉄道」の観光列車「のと里山里海号」が人気を集めている。営業区間は同県七尾市―穴水町の33・1キロ。車窓から見える里山里海の美しい景色に加え、女性アテンダントの沿線ガイドなどが楽しめる。沿線人口が減る中、観光列車で県外からの誘客に取り組む。
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車窓を覆う木々が姿を消すと、穏やかな海が広がっていた。海沿いの斜面を縫うように、小さな2両編成の列車が「ガタゴト」と揺れながら進んでいく。石川県・能登半島の東側に面した七尾湾。水面に波はほとんどなく、まるで湖のようだ。
同県七尾市と穴水町を結ぶ第三セクター「のと鉄道」が、2015年4月から運行を始めた観光列車「のと里山里海号」。今月上旬、七尾駅から乗車した。主に七尾湾沿いを走る33・1キロ。普通列車だと約40分だが、観光列車は1時間ほどかけてゆっくりと走る。
出発して30分余り。列車が海を見下ろす高台で停車した。美しい漁村の風景がある深浦地区。乗客が一斉にシャッターを切り始める。沿線に3カ所ある「ビュースポット」の一つだ。乗客に、沿線の選(え)りすぐりの景観を楽しんでもらうために列車が約1分間、一時停車する。
穏やかな海と田園風景を見ているうちに、列車は終着穴水駅に到着した。夫婦で乗った東京都町田市の藤原良子さん(75)は「海の景色が本当に素晴らしかった。もう少し乗っていたかった」。
ローカル線ののどかな風景が人気の「のと里山里海号」。沿線住民が減る中、県外からの誘客効果に期待が集まる。
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