親が育てられない子どもを匿名で預かる「赤ちゃんポスト」の設置を見送ったマナ助産院(神戸市北区ひよどり台2丁目)が、思いがけない妊娠や出産に悩む女性の相談窓口を開設した。永原郁子院長(61)は「1人で悩まずに相談して」と呼びかけている。
相談窓口は「小さないのちのドア」で、助産師が24時間常駐。「妊娠したが誰にも言えない」「赤ちゃんを育てられない」といった女性の悩みを聞く。無料で、匿名でも受け付け、健康保険証の提示も不要だ。必要なら特別養子縁組をあっせんする民間団体や児童相談所へつなぐ。JR神戸、三ノ宮などの駅からのタクシー代も同院が負担する。9月の開設以降、1日2件のペースで相談が寄せられているという。
厚生労働省によると、2016年度に心中を除く虐待で死亡した子どもは49人。0歳児が32人と最多で、うち半数が生後0カ月だった。主な加害者は実母が30人と最も多かった。
「赤ちゃんポスト」は07年に慈恵病院(熊本市)に全国で初めて開設された。関西ではNPO法人が昨年2月、全国2例目としてマナ助産院に設置する計画を発表したが、常駐の医師がいないため断念。その後、同院は独自に相談窓口の開設準備を進めてきた。
永原さんは22歳から助産師として出産に立ち会う一方、相次ぐ乳児の遺棄事件や中絶に心を痛めてきたという。「赤ちゃんを死なせてしまった女性も、決してそうしたかったわけではないはずだ。小さないのちを守る仕組みをつくりたい」と話す。
相談は電話(078・743・2403)やメール(inochi@door.or.jp)、LINE(ライン、inochi-door.mana)でも受け付ける。(野平悠一)