山の中の小さな映画館に懐かしい昭和の歌が響いた。80歳の双子の演歌歌手「こまどり姉妹」が、初めて立った高知県安田町の大心劇場の舞台で熱唱した。
21日夜、東京など県内外から100人を超すファンが駆けつけた。澄んだ空に月が鮮やかな秋の夜に、姉妹は華やかな着物姿で登場した。
ヒット曲の「ソーラン渡り鳥」を始め、「浅草姉妹」、「三味線渡り鳥」など10曲を次々と歌い上げる。映画スターらのポスターで彩られた劇場は昭和の風情を増していく。
来年でデビュー60周年を迎える姉の長内栄子さんと妹の敏子さんのコンサートは、高松市のパブ劇場「狸(たぬき)ご殿(てん)」を経営する藤岡清春さんが企画した。「昭和の薫りがする映画館で姉妹に歌ってもらいたい」という思いが実現した。
東京都東久留米市から来た小峰和夫さん(65)は「80歳とは思えない歌声に力を感じた。来て本当によかった」と感激した様子だ。子どものころからファンという奈半利町の梅原治子さん(65)は「この劇場で姉妹の歌が聴けて涙が止まらないほどうれしいです。声に張りがありパワーをもらえました」。
歌い終わった姉妹は「ポスターも看板も昭和でいっぱい。こんなすてきな映画館で歌えてうれしいです」と喜んでいた。
映画館主の小松秀吉さん(66)は「姉妹の歌声でこの映画館も元気をもらえました」と満足そうに話した。(笠原雅俊)