舞台「華氏451度」に主演 吉沢悠(ひさし、40)
オファーを受けた時、ワクワクすると同時に不安も感じた。レイ・ブラッドベリのSF小説を原作にした舞台「華氏(かし)451度」の主人公、モンターグ役。本の所持が禁止された近未来、本を焼却する「昇火士」として働くうち、社会に疑念を持ち始める男だ。「葛藤を抱えながら一歩前に出る人。演じるのは大変だと思った」。俳優の友人からの「白井晃さんの演出を受けられるなら、こんな幸せな時間はないよ」という一言が、背中を押した。
スマホ社会に警告か 舞台「華氏451度」主演の吉沢悠
稽古場の白井は、自分とは異なる俳優のアイデアも否定せず、試した。逆に「1回やってみて」と、動くことで役の気持ちを感じさせる時も。取材をした、横浜での公演中も「毎日100%で演じ、そこで何かを発見する。舞台を学びの場とは思っていないけれど、結果的にそうなっていると感じます」。友人は正しかった。
画面からあふれ出る映像や音に浸ったモンターグたちの世界は、現代の日常と重なる。「便利になること、進化は止められない。使い方や向き合い方だと思うんです」。終幕、脚本に書かれていない白井の演出に、大事なメッセージが込められているという。
「最近は『答え』を明確に出す…