「吹奏楽の聖地」と呼ばれた普門館(東京都杉並区)。耐震上の理由で来月、解体工事が始まり、48年の歴史に幕を下ろす。国内有数の規模を誇る大ホールは数々の名舞台に彩られてきた。
特集:普門館
さよなら「吹奏楽の聖地」 普門館、解体前に舞台を開放
1970年に開館した普門館は、所有する宗教法人「立正佼成会」が文化発信の拠点として建設した。敷地は約1万5千平方メートルで、大ホールは国内最大級の約5千席を備える。宗教世界を思わせる照明や黒のリノリウムの床、出演者専用のエスカレーターなど豪華な造りが目を引く。
「帝王」カラヤンも満足の音響
開館直後の70年代には、世界有数のオーケストラやバレエ団などの公演が数多く開催された。その代表が、「帝王」と名高い世界的指揮者・カラヤンの公演だ。77年、79年、84年にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と舞台に立ち、多くの録音を残した。
大規模なホールは音が散らばり、オーケストラの鑑賞には不向きなのでは――。当時、クラシックファンの間に流れた「定説」だ。77年の公演時、FM東京(現在のTOKYO FM)の番組プロデューサーとして録音に立ち会った音楽評論家の東条碩夫(ひろお)さんは「下見に行った時、これは大変なホールだと思った」と明かす。
一方、改善策は講じられていた…