市の名前を「丹波篠山市」に変更するか否か――。兵庫県篠山市で、市名変更の賛否を問う住民投票と、前市長の辞職に伴う出直し市長選が11日、告示された。いずれも18日に投票される。市名変更を巡って住民投票が実施されるのは異例だ。
「丹波篠山市」はあり?なし? 住民投票に5割の「壁」
市長選には11日午前11時までに、前市長の酒井隆明氏(64)=自民、公明、国民、維新推薦=と、前市議会副議長で住職の奥土居帥心(すいしん)氏(60)が、いずれも無所属で立候補を届け出た。
市によると、「丹波篠山」は昔から篠山市域を指し、ブランド名を冠した黒豆や黒枝豆、栗などは全国で人気だ。だが、2004年に合併で隣に丹波市が誕生すると、丹波市に買いに行く人が増えたという。
酒井氏は「混乱解消のため」として今年8月に市名変更の方針を発表した。ところが、市民団体「市名の名付け親になろう会」が「市民の手で市名を決めよう」と署名集めを展開。住民投票の実施に必要な数を大きく上回る1万人を超える署名を集めた。
実施が決まると酒井氏は「市名変更を進めた活動の信を問う」と10月16日付で市長を辞職し、出直し市長選への立候補の意思を表明した。酒井、奥土居両氏とも住民投票の結果を尊重するとしている。
ただ、住民投票は「投票結果に尊重義務を課し、信頼性を持たせるため」などの理由で、市条例の規定で投票率が50%に達しないと成立せず開票されない。「住民投票を成立させよう」と市内の市民団体などはチラシを全戸配布したり、歌やダンスの催しを開いたりして投票を呼びかけている。この1、2年、各地の住民投票は、条例の多くが成立条件とする投票率50%に達せず、開票されないケースが相次いでおり、投票率も注目される。
この日午前、酒井氏は市内の駐車場で「市名変更は難しい問題。市民の心に対立ができているようで市政の大事なことも前に進められない。住民投票できっちり解決したい」と訴えた。
一方、奥土居氏は選挙事務所前で「市名でいきなり市政が発展するはずがない。与えられた(市の)名前で、市政を発展していくのが市長の役割だ」と主張した。
市選管によると、10日現在の選挙人名簿登録者数は3万5281人。(年齢は投票日現在)