兵庫県篠山(ささやま)市で18日、「丹波篠山市」への市名変更の賛否を問う住民投票と、前市長の辞職に伴う出直し市長選が投票された。住民投票は投票率が69・79%で、市条例が定める成立条件の50%に達し、開票の結果、賛成1万3646票(56・5%)、反対1万518票(43・5%)で賛成多数となった。当日有権者数は3万5005人。市名変更に必要な条例案が今後、市議会に提案される見通し。
「丹波篠山市」はあり?なし? 住民投票に5割の「壁」
この1、2年、各地の住民投票は多くが成立条件の投票率50%に達せず不成立となる例が相次ぎ、投票率が注目されていた。
市名変更を巡っては、隣に同県丹波市が誕生した2004年以降、農業や経済関係者らの間で黒枝豆や焼き物の「丹波焼」などのブランドイメージが失われるとの懸念が強まり、市名に「丹波」を加えるべきだとの声が上がった。酒井隆明市長(64)は今年8月、変更の方針を発表した。
ところが、「市名の名付け親になろう会」が「市名変更が市長ら一部の人の手で決まるのは、おかしくないですか。住民投票条例があるのに」との声から結成され、住民投票の実施に必要な数を大きく上回る1万人を超える署名を集めた。
同会の小寺恵美代表(35)はこの日夜、開票所を訪れ、「誇りに思う。住民投票が開票まできたことは、私自身も驚いた。市民で決めた名前ならそれが一番で愛着がわくと思う」と話した。
昨年2月に市名変更の要望を市に出した市商工会の圓増亮介会長は「とにかくうれしい。皆さんに良かったと思ってもらえるよう5年先、10年先に向け、素晴らしい街づくりをしていかなければ」と話した。
出直し選経て4期目へ
市長選は、市名変更を進めた前市長の酒井隆明氏(64)=自民、国民、公明、維新推薦=が、前市議会副議長で住職の奥土居帥心(すいしん)氏(60)を破って4選を決めた。市内の篠山商工会館で「ようやく市名の問題が解決できた。全国にさらに大きく丹波篠山市を盛り上げていける」と語った。
市名変更の方針を発表後、住民投票の実施が決まると、行き詰まった。「住民投票で解決させ、市政を前に進めたい」と10月16日付で市長を辞職し、出直し選への立候補を表明。任期は来年2月まで。同月に再び市長選が実施される。