プロ野球・横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智選手(26)には、「小学生の野球チームのスーパーバイザー」というもう一つの顔がある。就いたのは、野球界への危機感からだ、という。子どもや若手の成長を妨げる指導方法が残ると指摘し、ミスを恐れず可能性を伸ばせるような環境づくりに力を注ぐ。野球の日本代表「侍ジャパン」で4番も務めた強打者に思いを聞いた。
筒香流、人を導く力とは 「罰はまったくいらない」断言
なぜ選手は暴力を受け入れるのか 気づかない「ゆがみ」
なぜコーチは暴力をふるうのか 怒りは人を動かさない
――昨年から、大阪府の硬式野球チーム、堺ビッグボーイズ(BB)の小学生の部「Team AGRESIVO(チーム・アグレシーボ)」のスーパーバイザーに就きましたね。ご自身がかつてプレーしたところです。
「日本の野球界は、このままではまずいと感じ、就任させてもらいました」
――どこが「まずい」のでしょうか。
「最初から答えを与えすぎ、選手は言われたことしかしなくなっています。ミスしたときもすごく怒られる。一つ一つのプレーに必ず何かを言われて伸び伸びとプレーできず、自由な発想や表現ができていないと思います」
――堺BBで大切にしていることは。
「子どもたちを怒鳴りつけるようなことをしない。指示待ちにならず、自分で考えて行動できるようにすることです。他のチームのことを見聞きすると、日本野球界の現状はそうではないと思うことが多いです」
――今年夏、少年野球で暴力を振るう指導者の動画が出回っていました。
「見ました。あり得ないことですよね」
――スポーツの現場や会社などで、パワハラ問題が次々と表面化しています。
「僕も耳にします。『怒鳴る』『怒る』『殴る』という指導者は逆に、相手に聞いてもらえる言葉を選べておらず、言うだけで足りないから殴ったり怒鳴ったりしてしまう」
――では、どんな指導を理想と考えますか。
「温かく、いい距離感でじっくり見守る。違った方向に行っている、迷いがあるときに手を差し伸べる。答えをあげればすぐにできるので、言いたくなる気持ちもわかりますが、子どものためになっていないと感じます。自由な発想が膨らむ環境をつくることです」
――筒香選手の少年時代はどう…