海外での紛争地取材で拘束されたジャーナリストや、予期せぬ病気や貧困に陥った人々の「自己責任」が騒がれる現代。そんな日本社会の「冷たさ」の起源を、江戸時代に探ろうとした研究者がいる。奈良大学教授(近世日本史)の木下光生さん(45)。「実は自己責任社会だった江戸時代」の実態とは。
安田さんおわび、外国特派員は「謝罪の必要あるのか?」
日本人拘束、繰り返される「自己責任論」 背景に何が
江戸時代の村の実態を映した史料を幅広く掘り起こし、自己責任という観点から当時の社会状況を分析した。近著『貧困と自己責任の近世日本史』が話題だ。
「安田純平さんが解放されたとき、『謝れ』という圧力が上がる一方、『政府が邦人を救出するのは当然』との意識は希薄に見えました。根底にあるのは、困った人への公的救済に冷たい『自己責任』の考え方でしょう。日本社会の冷たさを映した事件だったと思います」と木下さんは朝日新聞の取材に語った。
江戸時代の資料を掘り起こし、貧困世帯を誰がどう救っていたのかを調べた。見えてきたのは日本が当時から自己責任をよしとする社会だったことだ、と主張する。
きのした・みつお 1973年生まれ。専門は近世日本史。貧困救済の実態に迫った近著「貧困と自己責任の近世日本史」が話題に。
「一般に、江戸時代は相互扶助…