佐賀・有田地方で焼かれた江戸時代の磁器「古伊万里」がオーストリアの古城に多数存在し、日本の重要文化財に相当する価値の高いものも複数含まれていることが、学習院大学の研究チームの調査でわかった。
古伊万里があったのは、かつて陶磁器の貿易商だった一族が所有するウィーン近郊ロースドルフの城。荒川正明教授(日本美術史)のチームが今年に入り2度調査した。第2次大戦後、城を接収した旧ソビエト軍が所蔵品を破壊したために多くは破片の状態で、中国や西欧の陶磁器を含め数万点に上った。
中心は古伊万里で、17世紀後半から18世紀前半の金襴手(きんらんで)と呼ばれる様式のものが特に多かった。金襴手は金や赤を多用し、豪華な印象で、壊れていない状態の作品としては、鳥を彫刻のように立体的に表現した瓶や、表面を網目状にくりぬく「透かし彫り文様」によるつぼなどがあった。いずれも日本ではあまり確認されていない作例だという。
古伊万里は17世紀以降、欧州の王侯貴族に好まれ、輸出された。荒川教授は「歴史的価値のあるものは日本で修復し、2020年に展覧会での公開も考えている。その後はまた城に戻したい」としている。(木村尚貴)