豪雨の原因となる大量の水蒸気を海上でとらえる実験が始まった。気象庁が九州沿岸を航行する民間貨物船にセンサーを搭載。GPS衛星の電波を船上の受信機で受け取る際、大気に含まれる水蒸気が増えると電波の到達がわずかに遅くなる性質を利用し、上空にある水蒸気の量を測る試みだ。
九州北部豪雨や西日本豪雨では、東シナ海からもたらされた大量の水蒸気によって積乱雲が次々と発達。帯状に並んで集中的に豪雨が降る「線状降水帯」となり、大きな被害がでた。
豪雨の予測には水蒸気の観測が欠かせないが目に見えないため難しい。地上では多数のGPS受信点で測っているが海の上は空白域だ。海上は気象衛星での観測があるが常時データをとれないなどの弱点もある。
気象庁気象研究所の小司(しょうじ)禎教(よしのり)室長らは東シナ海を行き来している船に注目。周辺を定期航行している6隻の民間貨物船に協力を依頼し、10日からGPS受信機などを設置してきた。
17日には福岡市東区の香椎浜ふ頭で、九州と沖縄を結んで食料などを運ぶ貨物船「わかなつ」(琉球海運、約1万トン)の船橋上部に機器を取り付けた。約2年間、計測する予定だ。平良光秋船長は「気象予測の改善は船に乗る我々にも役立つ。私たちの航行でデータが集まり、防災に役立つのならば光栄だ」。
小司さんは「大量の水蒸気ができる海上に観測網を広げることで、気象予測をより高めていければ」と期待している。(竹野内崇宏)