ベルギーのミシェル首相は18日、国会で辞任する意向を表明した。移民保護に関する国際合意への署名に連立与党の一部が反対して離脱し、野党から不信任決議を出す動きが出ていた。フィリップ国王は辞任の申し出を受け入れるか決定を保留している。
辞意のきっかけになったのは、国連主導で10日に採択された合意文書「安全で秩序ある正規移民のためのグローバル・コンパクト(世界への約束)」。世界の繁栄や持続的な発展に貢献しているとして正規の移民を後押しする一方、不法移民を減らす努力の必要性が盛り込まれている。
ミシェル氏が署名する意向を示すと、連立与党4党のうち最大議席を持つ右翼政党「新フランドル同盟」が「移民政策に関する主権を失うことにつながる」などとして反発。同党出身の閣僚が辞任し、連立政権の枠組みが崩壊。18日、首相の不信任決議を提出する野党の動きも表面化した。
ミシェル氏は国会で「自分の主張が受け入れられていない。この状況を受け止めねばならず、辞任する」と語って、その後、国王に辞任を申し出た。
合意文書をめぐっては、米国も「国内法や国益に従って移民制度を管理する国家の主権を犠牲にする」として署名を拒否。国連のグテーレス事務総長は「合意文書は、移民政策を各国に押しつけることを認めるものだとの神話があるが、ウソだ。条約ではなく、法的な拘束力もない」と批判に対して反論している。(ブリュッセル=津阪直樹)