手のひらに収まる小型の衛星アンテナで津波警報を受信する仕組みを、オーストラリアの研究者が開発した。各国機関が出した警報を10秒余りで、被害が想定される地域に国境を越えて伝えられるという。アンテナと警報器を合わせても1万円前後で設置できるとして、アジア太平洋の各国に導入を提案している。
豪フリンダース大情報通信研究室(アデレード)のポール・ガードナースティーブン上級講師が開発した。沿岸部の住宅の屋根などに、長さ10センチほどの衛星アンテナを設置。同大に設ける「運用センター」が各国機関からネット経由で津波警報を受け取り、津波が予測される地域に向けて人工衛星経由で情報を発信する仕組み。9月に行った実証実験では、同大から南太平洋の島国バヌアツまで11秒で情報が届いたという。
アンテナで津波の情報を受信すると、接続した警報器が音を発する。警報器によっては、数百メートル先まで音が届くため、集落に一つ設置すれば十分という。これらの装置は小さなソーラーパネルにつなぎ、停電になっても動く。費用は計100~200豪ドル(約8千~約1万6千円)。普段はラジオのアンテナとしても利用できる。
課題は、実際の運用に向けてシステムを完成させるために約4千万円の費用が必要となるほか、運用センターの人件費などとして毎年4千万円ほどの運営費がかかることだ。ガードナースティーブンさんは豪州や太平洋の各国に、システム活用に向けた資金支援の働きかけを続けており、「サイレン塔などに比べてメンテナンスも簡単だ」と話している。(アデレード=小暮哲夫)