今年の干支(えと)は亥(い)(イノシシ)。ときに京都府内の市街地を暴走して人を襲うが、昔からなじみ深い動物で狛猪(こまいのしし)が鎮座する寺もある。東山区の京都国立博物館では特集展が開かれている。独特のうまみがある肉は今が旬。ぼたん鍋ではないメニューを提供する店もある。楽しみ方はあれやこれやだ。
同区の建仁(けんにん)寺の塔頭(たっちゅう)「禅居庵(ぜんきょあん)」。境内のあちこちにイノシシの像やレリーフがある。本尊はイノシシに乗った摩利支天(まりしてん)だ。
参拝者を迎えるのは5対10頭の狛猪。手水(ちょうず)舎ではイノシシの口から水が噴き出る。境内にはイノシシの石像や絵馬が多く置かれ、本堂の欄間やつり灯籠(どうろう)にもイノシシの彫り物がある。住職の上松正明(しょうみょう)さん(71)は「イノシシを拝み、動じることなく目標に向かってまっすぐ進める年にしてほしい」と話す。
2014年6月にオープンした左京区のバル「ボタン」。ランチ営業は木曜、金曜のみで、イノシシの肉を使った週替わりメニューを用意。ハンバーグ、カレー、マーボー豆腐、オムライス、クスクスなど、様々なランチメニューにイノシシの肉を使っている。週替わりランチは税込み950円で限定20食だ。
ジビエが注目され始め、気軽に食べられる店にしたいと思って店名を決めた。服のボタンにちなみ、人と人を「つなぐ」という願いも込めた。
イノシシ肉のソーセージを鉄板で炒め、溶き卵をかけたナポリタンも週替わりランチの一つだ。ソーセージをかむと、濃厚な肉のうまみがジュワッとしみ出てくる。「亥年やからこそ、イノシシを食べて元気に過ごして」と、店主の望月昭宏さん(40)。年明けの営業は3日から。ランチは10日に再開する。
京博では1月27日まで、新春特集展示「亥づくし―干支を愛(め)でる―」が開かれている。イノシシを描いたふすま絵や拓本、皿など大小11点が並ぶ。
企画した同館研究員の上杉智英(ともふさ)さん(42)は「一本一本の毛並みや脚の裏まで細かく立体的に描かれたふすま絵は必見」。大阪市鶴見区の主婦(64)は「来夏に誕生する初孫は亥年生まれ。だから興味があるし、多彩なイノシシの作品にひきつけられた」と話した。
1月19日には、講堂で上杉さんの講座「いのししはめでたいか―いのしし図像学―」がある。(高橋豪)