汚染された食用油による大規模な食中毒事件「カネミ油症」の患者に長く寄り添い、苦悩の日々をレンズにとらえた写真家がいる。1968年の発覚から半世紀たった今も満足な救済がなされていない状況に、自らの非力を思い、国への怒りを募らせている。
吹き出物の痕が一面を覆う背中、不安げにこちらを見つめる幼子の瞳――。横浜市の写真家、河野裕昭さん(68)はこの夏、かつて撮影した患者が夢に現れ、うなされる夜が続いた。患者と過ごした記憶がふいによみがえり、息苦しくなることもあったという。
油症発覚から50年の今年、しまい込んでいたフィルムの整理、保存を思い立ち、デジタル化の作業に取りかかっていた。「彼らのその後を思うと、人知れず苦しんでいるのでは、と考えて胸が痛む」
原因企業のカネミ倉庫がある北…