農閑期の冬の日曜だけ開店する和歌山県かつらぎ町のラーメン店「ラーメン倉庫」が、今年も20日からオープンした。ラーメン好きの果樹農家の男性が2011年に農業用倉庫で始め、今年は4月下旬まで計15日間だけの営業の予定。その珍しさから「幻のラーメン屋さん」と人気を集め、営業日は行列ができる。
同町の山中にある鉄骨2階建ての倉庫。重い鉄の扉を開けると、店内には果実用コンテナなどで作った手作りの4人掛けテーブルが九つ並ぶ。「お待たせ、ありがとな」。店主の平山忠央さん(61)が店内に設けた手作りの屋台から顔を出し、ラーメンを手渡した。
平山さんがラーメンに魅せられたのは、ラーメン店が立ち並ぶ京都で過ごした大学時代。「そのころから自分で店を開くのが夢になった」
卒業後は、実家の農家を継ぐため帰郷し、現在は梅、スモモ、柿を育てる果樹農家。帰郷後も各地のラーメンを食べ歩くうちに、20年ほど前から「自分のラーメンを作りたい」との気持ちが募った。雨で農作業ができない日や農閑期を利用して、自宅の台所で研究に打ち込んだ。スープの食材のアイデアで、ノートがすぐに埋まっていった。11年に妻と娘の家族4人で週末だけの営業を始めた。
メニューは、開店当初からスープが自慢の「しょうゆ豚骨ラーメン」の1品で勝負。多くの人に味わってもらおうと600円(税込み)と価格を抑える。平山さんは「店にはお金をかけんようにしとんのよ」。テーブルも屋台も手作りで、整理券も厚紙の方眼紙を買ってきて切って、押印しただけのものだ。
開業当初はほとんどが地元の客。それが、農閑期の週末営業のみという珍しさから「幻のラーメン屋」などとテレビでも紹介され、北海道から沖縄まで全国各地からお客が訪れるようになった。
夫婦で来店した大阪府の大田哲…