昨年12月9日に宮崎市で開かれた青島太平洋マラソンで、心肺停止となった男性を救助したとして、大会実行委員会が27日、ランナー10人らに感謝状を贈った。ランナーとして参加した消防士や医師らの迅速な救命措置のリレーが、男性の命をつないだ。
スタートから30分後の午前9時半。大分市の60代男性が出発地点から約6キロで受け身も取らず、突然倒れた。脇のガードロープを越えて、のり面に落ちそうになった。
「危ない」。男性の後方を走っていた消防士の山本大祐さん(32)はとっさに男性の身体を支え、安全な場所に運んだ。声を掛けるが反応はなく、脈も止まっていた。即座に気道を確保し、救命措置を始めた。
そばを走る救急救命士、浜砂憲治郎さん(46)も異変に気づいた。「これはまずい。自分がやらないと」。人工呼吸に加わった。
約10分後、自動体外式除細動器(AED)が運ばれてきた。指揮したのが、消防署の救急係に所属する浜畑貴晃さん(47)。「倒れている人がいる」と聞いて、走行を中断したという。男性は2度目の電気ショックで心肺蘇生した。
到着した救急車には宮崎大医学部付属病院・救急救命センターの医師安部智大さん(36)が乗り込んだ。「心肺停止は2度起こることがある」。車内から病院に必要な準備を指示し、
搬送後にコースに戻った。
男性は宮崎大医学部付属病院に入院したが、約2週間後に退院した。現在は後遺症も無く、仕事に復帰したという。男性は「奇跡的に、とても運が良かったです。全てが素早い措置の結果です。本当にありがとうございました」と事務局に手紙を寄せた。
事務局によると、救護にあたったランナーは少なくとも10人おり、全員が消防士や医師、看護師など人命救助のエキスパート。救助後はレースに復帰し、完走した。
宮崎市役所での感謝状贈呈式で、山本さんは「普段やっている仕事ですが、男性が社会復帰されたと聞いて良かった」と話した。
大会名誉顧問の戸敷正・宮崎市長は「尊い命が救われた。みなさんの連携がすばらしかった」と感謝の言葉を贈った。
昨年の青島太平洋マラソンは32回目で、約1万人以上が参加した。