自らの気持ちを歌詞にこめ、聴衆にぶつけるラップ。事故で体が不自由になっても、ステージに立ち続けるラッパーが大阪にいる。車椅子だからって、それがどうした。ラップは、自由だ!
深夜、大阪・アメリカ村のクラブ。暗がりのステージを、スポットライトが照らす。重低音が響くなか、キャップにパーカ姿の男性がマイクを握り、リズミカルに言葉を重ねていく。
♪控え目に生きる? なんて無理無理 俺は極度の目立ちたがり 一目瞭然足が悪い コイツが俺の足代わり
「コイツ」、すなわち車椅子上でラップを披露するのは「LARGE(ラージ)―T」こと、大里大樹(たいき)さん(38)。客はリズムに合わせ、楽しそうに体を揺らす。それを見つめる大里さんの表情は、笑顔だった。
ラップとの出会いは、長距離トラック運転手だった27歳の時。職場の先輩に誘われた。一般の楽曲に比べ文字数が多く、気持ちをダイレクトに言葉で表現できる点に魅せられた。
半年ほどでクラブのステージでデビュー。聴き入る人もいれば、つまらなさそうに席を移る人も。客の心をつかめるか。「真剣勝負」が刺激的だった。
2012年夏、海で事故に遭う…